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血液型編集用



5)異型造血幹細胞移植による異常反応(偽陰性)
【患者情報】
  28歳男性,他病院から輸血目的で転院してきた。
【ABO血液型結果】

オモテ試験 ウラ試験
抗A 抗B A1血球 B血球
4+ 0 0 0

【問題点】
  オモテ試験A型,ウラ試験O型で,オモテ・ウラ不一致となった。
【考え方】

  ➀オモテ試験が正しいなら,本来あるべきB血球との反応(抗B抗体)が無い。
➁ウラ試験が正しいなら,本来あるべき抗Bとの反応(B抗原)が無い。

【追加検査】

  ➀抗B抗体が弱くなる原因について考える。(年齢,疾患治療に伴う免疫低下など)
➁A抗原が4+と強いのにも関わらず,B抗原が陰性になる原因について考える。亜型,移植など)

【判定】

  疾患名,聞き取りの結果,患者は元々AB型であり,他院でA型のドナーの異型造血幹細胞移植を受けていたことがわかった。異型造血幹移植患者への輸血については,患者の血球及び血漿と反応しない血液を選択する必要があります(表4)。移植後,ドナーの型に置き換わる間,患者の血液型と混在する期間があります。選択する製剤の血液型に関しては,主治医と相談し決める必要があります。患者型,ドナー型が不明な場合は,赤血球製剤はO型,血漿製剤はAB型を選択することでリスクの低下に繋がります。



表4 造血幹細胞移植後の輸血製剤の選択

 

血液型一致 Major missmatch Minor missmatch Major , Minor
missmatch
患者とドナー
血液型の
組み合わせ
ドナー:患者
同型
ドナー:患者
(A型:O型)
(B型:O型)
(AB型:A型)
(AB型:B型)
(AB型:AB型)
ドナー:患者
(O型:A型)
(O型:B型)
(O型:AB型)
(A型:AB型)
(B型:AB型)
ドナー:患者
(A型:B型)
(B型:A型)
特徴 通常のABO血液型輸血と同じ 患者が保有する血漿中の抗体がドナー由来の抗原と反応する。 ドナーが保有する血漿中の抗体が,患者由来の抗原と反応する。 患者が保有する血漿中の抗体が,ドナー由来の抗原と反応する。かつドナーが保有する血漿中の抗体が,患者由来の抗原と反応する。
移植時の造血幹細胞処理の有無と内容
(血漿を除去)

(血漿を除去)

(赤血球・血漿を除去)
移植後の
輸血療法

【赤血球】
患者とABO式血液型同型の製剤が適応となる ドナーがAB型で患者がA,またはB型の場合,患者と同型の赤血球製剤が適応となる
(無ければO型も可)

ドナーがAまたはB型で患者がAB型の場合,ドナーと同型の赤血球製剤が適応となる
(無ければO型も可)
赤血球にA抗原,B抗原を持たないO型の赤血球製剤が適応となる。
移植後の
輸血療法

【血小板,
FFP

 
ドナーがAまたはB型で患者がO型の場合,ドナーと同型の血小板製剤が適応となる
(無ければ,AB型も可)
ドナーがO型で患者がAまたはB型の場合,患者と同型の血小板製剤が適応となる
(無ければ,AB型も可)
抗A抗体と抗B抗体が存在しないAB型の血小板製剤が適応となる。
備考 将来的には患者の赤血血球型はドナー由来のものに変わる。

【ポイント】

  日本人のIgM抗A抗体,抗B抗体は,年々低下しており,特にA型・O型のヒトが持っている抗B抗体は抗A抗体と比べて低く見られる。(図6,7参照)