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➂RhD血液型とその他の稀な血液型について

    Ⅴ.輸血前検査
     

    RhD血液型
     
     Rhとは,アカゲザル(Rhesus monkey)の赤血球でウサギを免疫して作製された抗血清が,白人赤血球の85%に凝集させることから,Rhesusの頭文字RhをとってRh抗原と名付けられた。これはヒトとアカゲザルに関連した新しい血液型とされた。
     しかし,その後,抗Dを産生したヒト抗体とサルを免疫した抗血清には性状が異なることがわかったが,Rhの名称はそのままにして,アカゲザル赤血球にあるD抗原は発見者のLandsteinerとWienerの頭文字をとってLW抗原と命名された。


     
    RhD陽性,RhD陰性,weekDについて
     
     RhD抗原は非常に免疫原性が高く,産生された抗D抗体は重篤な溶血性輸血副作用(HTR)や胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)の原因となることがあります。よって,輸血の際にはABO血液型同様にRhD血液型検査を行うことが重要となります。通常,RhD血液型は表1の様に判定されます。

     
    表1 RhD血液型の判定(直後判定)
    抗D Rh control 判定
    0 RhD陽性
    0 0 判定保留 ※1
    判定保留 ※2



    <判定保留 ※1の解説>

     直後判定が陰性の場合,直ちにRhD陰性と判定してはならない。理由はRhD抗原の変異型(質的・量的に異常がある)でも陰性になるからである。このような時にはD陰性確認試験(図1,表2)を実施する必要があります。
     

    表2 D陰性確認試験の判定
    抗D Rh control 判定
    0 0 RhD陰性
    + 0 Week D



    <判定保留 ※2の解説>
    <判定保留 ※2の解説>
    考えられる要因とその対策について紹介する。

    1)要因・・・寒冷凝集素や連銭形成による非特異反応
    対策・・・赤血球を37℃生食にて数回洗浄し,温生食による血球浮遊液を作成後再検査する。
    2)要因・・・温式自己抗体による非特異反応
    対策・・・①抗D試薬がポリクローナルであれば,モノクローナル抗D試薬を用いて再検査する。
    対策・・・②直接抗グロブリン試験を実施し,陽性であれば自己抗体の精査をする。


     

    Partial Dについて
     
     Partial Dはポリクローナル抗Dとの反応が陽性にもかかわらず,モノクローナル抗Dとの反応が陰性となることにより検出されるRh型のことを指します。
     赤血球のDエピトープの一部分が欠損しているため,使用するモノクローナル抗Dの抗体濃度,反応増強剤,pHなどの違いによっても反応性が異なります。
     Partial Dの反応性をWeek Dと比較して表3に示します。


    表3 Partial DWeek Dの比較

    変異型 方法 抗D試薬
    ポリクローナル抗体 モノクロ―ナル抗体
    NO1 NO2 NO3 NO4
    Week D 直後判定
    陰性確認試験
    0
    3+
    0
    3+
    0
    3+
    0
    3+
    0
    n.t.
    Partial D 直後判定
    陰性確認試験
    3+
    4+
    0
    4+
    4+
    4+
    w+
    w+
    4+
    n.t.



    NO1:モノクローナル+ポリクローナル抗体ブレンド
    NO2:モノクローナル(IgM)+ポリクローナル(IgG)ブレンド
    NO3:モノクローナル抗体(IgG)
    NO4:モノクローナル抗体(IgM)

     

    輸血への対応
     
    (患者の場合)
    D陰性およびWeek Dの患者にはD陰性の血液製剤を用いる。Partial Dが判明した患者についても同様である。しかし,輸血を目的とした検査で,直後判定が陰性の患者には,D陰性の血液製剤を用いるため,患者のD陰性確認試験は必須ではありません。
    (供血者の場合)
    Week D, Partial D共にD陽性の供血者と同様にD陽性として扱う。直後判定が陰性の供血者においては, D陰性確認試験が必須となります。
     

    ケーススタディー チャレンジしてみて下さい。

     
    患者情報  手術予定の58歳の男性入院患者のために,4単位の赤血球製剤が申し込まれた。
     

    <術前検査は次のようであった>

    抗A 抗B 抗D Rh control A1血球 B血球
    3+ 0 3+ 1+ 0 4+
     
    問題1 患者はRhD陽性か?
     
    問題2 RhDに関する血液型検査において,このような結果を起こす原因を2つあげよ?
     
    問題3 緊急状態であれば,どのような検査を行い,何型の血液を選択すべきか?
     

     
    解答1
     
       Rh contorolが陽性の場合,Dに関しては判定できません。
     
    解答2
     
     1)RhD判定に用いられる試薬は,インキュベーションや抗グロブリン血清を用いなくても凝集が起こるように,牛アルブミンやPVPのような高分子化合物を含んでいる。そのため,状況によっては偽陽性を示すこともある。原因として多発性骨髄腫などによる高タンパク状態,あるいは血漿増量剤の輸注などが原因と考えられる場合や,強い寒冷凝集素(マイコプラズマ肺炎など)が存在する場合に見られる。解決策としては,患者血球を温生食にて数回洗浄し再検査することによって解決する。
     2)もう一つの原因としては,直接抗グロブリン試験(DAT)陽性がある。そのような場合は,モノクローナル抗D試薬を用いて判定することにより解決する。モノクローナル抗D試薬は,低蛋白濃度のためDAT陽性赤血球の影響を受けません。
     
    解答3  
     
       直ちに温生食にて数回血球を洗浄し,再検査してみる。モノクローナル抗D抗体は,DAT強陽性以外の全ての場合に正確なD判定が可能である。判定ができれば,A型Rh(+)の血液を選択する。DAT陽性が疑われる場合は,その原因(温式自己抗体,薬剤由来,同種抗体等)を調べる必要がある。輸血歴の調査や不規則抗体検査も有効である。また,最近では多発性骨髄腫治療薬 “ダラツムマブ” 投与によるDAT偽陽性が報告されているので注意が必要である。最終的に自己抗体が考えられる場合は,貧血状態,全身状態,疾患,自己免疫性溶血性貧血の可能性等を考慮に入れ,主治医に報告し考えられる状態とリスクについてコンサルトする必要があります。
     
    稀な血液型
     
     ヒトの赤血球上にある抗原の陽性頻度がおおむね99%以上のものを高頻度抗原といい,この抗原を欠く表現が“稀な血液型” と呼びます。輸血の際,容易に確保ができないため,注意が必要ですあり,赤十字血液センターでは,在庫による検索が可能な抗原陰性血と区別されています。
     わが国における確保が必要な血液型は,Fy(a-b+)型(約1/100人),Di(a+b-)型(約1/50人),Jr(a-)型(約1/2,000人)が大半を占めています。その他,Bombay型,para-Bombay型, K0型,D--(ディダッシュ)型,p型,Ge(2型,3型),In型などの血液製剤が年間数単位必要になることがあります。
     日本人では,高頻度抗原に対する抗体の中で,抗Jraの保有率が高く,また妊娠経験のある女性から多く検出されており,妊娠が抗体産生に深く関わっていることが示唆されています。稀な血液型の判定には特殊な抗血清や試薬が必要になってくるため,血液センターの協力が必要になります。
     

    以下に稀な血液型を紹介します(表4)。

    カテゴリー 血液型 稀な表現型

    Ⅰ群

    ABO
    PP1Pk,Globoside
    MNS
    Rh
    Lutheran
    Kell
    Duffy
    Kidd
    Dombrock
    Landsteiner-Wiener
    Kx
    Gerbich
    Cromer
    Ok
    John,Milton,Hagen
    I
    Lan
    Er
    Emm

    Bonmay,para-Bombay
    P,pk
    En(a-),S-s-U-,MkMk
    D- -,Dc-, RzRz, Rhnull, Rhmod
    Lu(a-b-),In(Lu)
    K-,Kp(a+b-),Kp(a-b-),Ko,K14, K18-,KYOR-
    Fy(a-b-)
    Jk(a-b-)
    Gy(a-)
    LW(a-b-)
    Kx-(McLeod)
    Ge:-2,-3
    IFC-, UMC-, Dr(a-)
    Ok(a-)
    JMH-
    I-
    Lan-
    Er(a-)
    Emm-

    Ⅱ群

    MNS
    Duffy
    Diego
    Dombrock
    JR

    S+s-
    Fy(a-b+)
    Di(a+b-)
    Do(a+b-)
    Jr(a-)


     

     

    Ⅴ.輸血前検査
     

    RhD血液型
     
     Rhとは,アカゲザル(Rhesus monkey)の赤血球でウサギを免疫して作製された抗血清が,白人赤血球の85%に凝集させることから,Rhesusの頭文字RhをとってRh抗原と名付けられた。これはヒトとアカゲザルに関連した新しい血液型とされた。
     しかし,その後,抗Dを産生したヒト抗体とサルを免疫した抗血清には性状が異なることがわかったが,Rhの名称はそのままにして,アカゲザル赤血球にあるD抗原は発見者のLandsteinerとWienerの頭文字をとってLW抗原と命名された。


     
    RhD陽性,RhD陰性,weekDについて
     

     RhD抗原は非常に免疫原性が高く,産生された抗D抗体は重篤な溶血性輸血副作用(HTR)や胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)の原因となることがあります。よって,輸血の際にはABO血液型同様にRhD血液型検査を行うことが重要となります。通常,RhD血液型は表1の様に判定されます。


    表1 RhD血液型の判定(直後判定)
    抗D Rh control 判定
    0 RhD陽性
    0 0 判定保留 ※1
    判定保留 ※2
     

    <判定保留 ※1の解説>

     直後判定が陰性の場合,直ちにRhD陰性と判定してはならない。理由はRhD抗原の変異型(質的・量的に異常がある)でも陰性になるからである。このような時にはD陰性確認試験(図1,表2)を実施する必要があります。
     

    抗D

    Rh
    control

    判定

    0

    0

    RhD陰性

    +

    0

    Week D

    表2 D陰性確認試験の判定



    <判定保留 ※2の解説>

    考えられる要因とその対策について紹介する。
    1)要因・・・寒冷凝集素や連銭形成による非特異反応
      対策・・・赤血球を37℃生食にて数回洗浄し,温生食による血球浮遊液を作成後再検査する。
    2)要因・・・温式自己抗体による非特異反応
      対策・・・①抗D試薬がポリクローナルであれば,モノクローナル抗D試薬を用いて再検査する。
    ②直接抗グロブリン試験を実施し,陽性であれば自己抗体の精査をする。


     

    Partial Dについて
     
     Partial Dはポリクローナル抗Dとの反応が陽性にもかかわらず,モノクローナル抗Dとの反応が陰性となることにより検出されるRh型のことを指します。
     赤血球のDエピトープの一部分が欠損しているため,使用するモノクローナル抗Dの抗体濃度,反応増強剤,pHなどの違いによっても反応性が異なります。
     Partial Dの反応性をWeek Dと比較して表3に示します。


    表3 Partial DWeek Dの比較

    変異型

    方法

    抗D試薬

    ポリクローナル抗体

    モノクロ―ナル抗体

    NO1

    NO2

    NO3

    NO4

    Week D

    直後判定
    陰性確認試験

    0
    3+

    0
    3+

    0
    3+

    0
    3+

    0
    n.t.

    Partial D

    直後判定
    陰性確認試験

    3+
    4+

    0
    4+

    4+
    4+

    w+
    w+

    4+
    n.t.

    NO1:モノクローナル+ポリクローナル抗体ブレンド
    NO2:モノクローナル(IgM)+ポリクローナル(IgG)ブレンド
    NO3:モノクローナル抗体(IgG)
    NO4:モノクローナル抗体(IgM)




     

    輸血への対応
     
    (患者の場合)
    D陰性およびWeek Dの患者にはD陰性の血液製剤を用いる。Partial Dが判明した患者についても同様である。しかし,輸血を目的とした検査で,直後判定が陰性の患者には,D陰性の血液製剤を用いるため,患者のD陰性確認試験は必須ではありません。
    (供血者の場合)
    Week D, Partial D共にD陽性の供血者と同様にD陽性として扱う。直後判定が陰性の供血者においては,D陰性確認試験が必須となります。
     

    ケーススタディー 挑戦してみて下さい。

     
    患者情報 手術予定の58歳の男性入院患者のために,4単位の赤血球製剤が申し込まれた。
     

    <術前検査は次のようであった>


    抗A


    抗B


    抗D

     

    Rh
    control

     

    A1
    血球

     

    B
    血球

    3+ 0 3+ 1+ 0 4+
     
    問題1 患者はRhD陽性か?
     
    問題2 RhDに関する血液型検査において,このような結果を起こす原因を2つあげよ?
     
    問題3 緊急状態であれば,どのような検査を行い,何型の血液を選択すべきか?
     

     
    解答1
     
     Rh contorolが陽性の場合,Dに関しては判定できません。
     
    解答2
     
    1)RhD判定に用いられる試薬は,インキュベーションや抗グロブリン血清を用いなくても凝集が起こるように,牛アルブミンやPVPのような高分子化合物を含んでいる。そのため,状況によっては偽陽性を示すこともある。原因として多発性骨髄腫などによる高タンパク状態,あるいは血漿増量剤の輸注などが原因と考えられる場合や,強い寒冷凝集素(マイコプラズマ肺炎など)が存在する場合に見られる。解決策としては,患者血球を温生食にて数回洗浄し再検査することによって解決する。
    2)もう一つの原因としては,直接抗グロブリン試験(DAT)陽性がある。そのような場合は,モノクローナル抗D試薬を用いて判定することにより解決する。モノクローナル抗D試薬は,低蛋白濃度のためDAT陽性赤血球の影響を受けません。
     
    解答3  
     
     直ちに温生食にて数回血球を洗浄し,再検査してみる。モノクローナル抗D抗体は,DAT強陽性以外の全ての場合に正確なD判定が可能である。判定ができれば,A型Rh(+)の血液を選択する。DAT陽性が疑われる場合は,その原因(温式自己抗体,薬剤由来,同種抗体等)を調べる必要がある。輸血歴の調査や不規則抗体検査も有効である。また,最近では多発性骨髄腫治療薬 “ダラツムマブ” 投与によるDAT偽陽性が報告されているので注意が必要である。最終的に自己抗体が考えられる場合は,貧血状態,全身状態,疾患,自己免疫性溶血性貧血の可能性等を考慮に入れ,主治医に報告し考えられる状態とリスクについてコンサルトする必要があります。
     
    稀な血液型
     
     ヒトの赤血球上にある抗原の陽性頻度がおおむね99%以上のものを高頻度抗原といい,この抗原を欠く表現が“稀な血液型” と呼びます。輸血の際,容易に確保ができないため,注意が必要ですあり,赤十字血液センターでは,在庫による検索が可能な抗原陰性血と区別されています。
     わが国における確保が必要な血液型は,Fy(a-b+)型(約1/100人),Di(a+b-)型(約1/50人),Jr(a-)型(約1/2,000人)が大半を占めています。その他,Bombay型,para-Bombay型, K0型,D--(ディダッシュ)型,p型,Ge(2型,3型),In型などの血液製剤が年間数単位必要になることがあります。
     日本人では,高頻度抗原に対する抗体の中で,抗Jraの保有率が高く,また妊娠経験のある女性から多く検出されており,妊娠が抗体産生に深く関わっていることが示唆されています。稀な血液型の判定には特殊な抗血清や試薬が必要になってくるため,血液センターの協力が必要になります。
     

    以下に稀な血液型を紹介します(表4)。

    カテゴリー

    血液型

    稀な表現型

    Ⅰ群

    ABO
    PP1Pk,Globoside
    MNS
    Rh
    Lutheran
    Kell
    Duffy
    Kidd
    Dombrock
    Landsteiner-Wiener
    Kx
    Gerbich
    Cromer
    Ok
    John,Milton,Hagen
    I
    Lan
    Er
    Emm

    Bonmay,para-Bombay
    P,pk
    En(a-),S-s-U-,MkMk
    D- -,Dc-, RzRz, Rhnull, Rhmod
    Lu(a-b-),In(Lu)
    K-,Kp(a+b-),Kp(a-b-),Ko,K14,K18-,KYOR-
    Fy(a-b-)
    Jk(a-b-)
    Gy(a-)
    LW(a-b-)
    Kx-(McLeod)
    Ge:-2,-3
    IFC-, UMC-, Dr(a-)
    Ok(a-)
    JMH-
    I-
    Lan-
    Er(a-)
    Emm-

    Ⅱ群

    MNS
    Duffy
    Diego
    Dombrock
    JR

    S+s-
    Fy(a-b+)
    Di(a+b-)
    Do(a+b-)
    Jr(a-)


     


 
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